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金山神社に行くこと [古社巡礼]

「じゅんで~す」
「長作で~す」

「佐藤春夫でございます」

閃いたときは面白いと思った。
しかし後々考えてみると、どうにもハードルが高い。
まずうけないに相違ない。


さて、今回やってきたのは山梨県都留市上谷にある金山神社。

祭神
・金山毘古命(かなやまひこのみこと):鉱山をつかさどる男神
・金山毘売命(かなやまびめのみこと):鉱山をつかさどる女神
・天津日高日子穂々手見命(あまつひこひこほほでみのみこと):穀物の神、別名山幸彦(やまさちひこ)
・石凝姥命(いしこりどめ):鋳物、金属加工の神
・天目一箇神(あめのまひとつのかみ):製鉄、鍛治の神、ちなみに一つ目の神

このように主として鍛治に関する神が祭られている神社である。
創立年代は不明。ただ、元禄の末頃、この地に遷宮してきたのは確からしい。



台輪鳥居の憂鬱

石造りの台輪鳥居。(台輪鳥居については→)道路から一寸ばかり奥まったところに立っている。道幅から察するに奥に移されたと見える。道幅と鳥居の幅がちくはぐなせいで、鳥居が邪魔者扱いを受けているのが気に掛かる。鳥居の幅は易々と拡張できるものでもないし、かと云って鳥居をさらに移すわけにも行くまい。困ったものだ。




鉄柵のガード

鳥居保護のためか、がっちりと鉄柵で覆われている。外観を損ねてしまい残念ではあるけれども、交通量の多い道路の手前、致し方あるまい。よく見ると両柱には注連縄のようなものが怠惰に巻きついている。かつては繋がっていたのかもしれない。曲がりなりにも、ここは参道である。鳥居の権威が過去のものになりつつあるのは止むを得ないが、少し寂しい気もする。




根巻鳥居を叩いてみれば‥

限りなく一般道に近い参道を行くことおよそ250メートル、二の鳥居にたどり着く。妙にのっぽで、でっかい。先の一の鳥居よりも大きい。叩けば「かんかん」と音のする金属製。稲荷鳥居のような配色だが、柱の根元が別のパーツ(黒い部分)が巻きついているのを見るに、分類上は根巻(ねまき)鳥居としておくのが良いように思われる。おまけに屋根付き、洒落ている。




かつての名残

石段をかつかつのぼる。愈々参道らしくなってきた。左側の石塔が目に入る。「二十三夜」とある。

「二十三夜」
特定の月齢の日に仲間同士で集まり、月を拝む行事「月待ち」のこと。陰陽道や密教系の行事である。この場合は月齢が23(下弦の月)の日に行う。他には十三夜、十五夜、十七夜、二十六夜などがある。そのなかでも取り分け人気だったのがこの二十三夜だったそうである。




無駄に推理

半分ほどのぼったところで、踊り場のお出まし。いびつな、固く絞った雑巾のような柱の灯籠である。柱のいびつさはさておき、何か変な気分がする。そう、台座と灯籠がちぐはぐなのである。それから台座らしき跡が四つあるのも気になる。いや、元々灯籠はなかったのだとすれば、六つの台座。あゝ成程、奴か。




『都留市社記』より借用

その答えは『都留市社記』にあった。さあ見てくれ給え。察した通り、ここには前後に補助柱を備えた鳥居――両部鳥居があったのだ。「それで?」と云われても困る。「ここには両部鳥居があったのだ」ただ、それだけのことである。




亜鉛葺き

詰まらぬ御託を並べているうちに拝殿に到着。切妻のごく平凡な拝殿。屋根の色はくすんでいてはっきりとは分からないが赤茶色だろう。
話は変わるが、この神社には大層立派な神輿があるという。慶応2年の作で、市内随一と専らの噂である。そのうちお目にかかりたいものだ。




銅板葺き

流れ造の本殿。こちらも割と平凡な造りで、特に言及すべきことはない。


屋根はかなり緑青が芽吹いている。マァものは云いようである。 神紋は三つ巴。



何か足りぬ

適当に境内をぶらつく。敷地にそれほど余裕はない広さである。はて、何か足りないような気がする。狛犬だ。どうやらここに彼らはいないようである。その分、灯籠がどんと構えているわけか。


『都留市社記』によれば、境内社にとして稲荷神社と祭神不詳の小祠があるようだが、この狭い境内を一寸見回しても、見つからない。どこかに移されたか、それとも緑に埋もれたか、はてさて。
二の鳥居が赤いのはかつての境内社稲荷神社の名残なのかもしれない。
こじつけな、余りにこじつけな話だが。


色々考えさせられるところの多い神社であった。



和風なチェスをつくるとしたら、灯籠形のポーンというのはどうだろう?
勿論、ナイトは狛犬で。

まるで蛇足。



参考文献

川口謙二・池田孝・池田正弘『鳥居 百説百話』東京美術
倉野憲司校注『古事記』岩波文庫
都留市教育委員会編『都留市社記』


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