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生出神社に行くこと(付・八朔祭) [古社巡礼]

詳説、今回やってきたのは山梨県は都留市四日市場にある生出(おいで)神社。


祭神
・建御名方命(たけみなかたのかみ):風神男神
・八坂刀売命(やさかとめのかみ):建御名方命の妻、記紀(※)には登場せず。

※記紀:『古事』と『日本書』の総称。


祭神を見て、これではまるで諏訪神社ではないか、とお思いの方も多いだろう。
えゝその通り、この神社、元々は諏訪神社であった。

社伝によれば
「(郡内領主)秋元公に世継なくこの神社に祈願したところ世継が生れ大変喜ばれ生出ずる崇厳な神であるとして領主の威光を以って名を生出神社とした」とある。
建御名方命、八坂刀売命の両神にしてみれば、「領主の威光とは、何たる勝手であることか!」とお怒りかもしれぬ。
が、そこは、信仰心が増すならば、とさらりとお流しになされたようである。
流石は神様、お心が広い。


阿呆な冗談はさておき、この神社、建立は可也古い。
奈良時代の大宝三年(703)までさかのぼる。
生出川の頂に毎晩、光るものが見えた。
不思議に思って、正体を調べに行くと、妙な岩がある。
表、裏ともに灯籠の形がある(彫られていたのか、模様なのかは不明)
周りを眺めていると、突然、これまた奇妙な老人が現れた。
彼曰く「この岩を神宝として諏訪大明神を祀れば、この里は必ずや守護されるであろう」
村人はこのお告げに従い、山頂近くに社殿を造営し、名を諏訪大明神とした。
その後、何度か遷宮し社名を改め現在に至る……大体このようなものである。

まぁ地元ではそんな霊験云々よりも、この神社の祭典「八朔祭り」で有名である。
八朔という呼び名の通り、旧暦の八月一日(現在では九月一日)に行われる祭りで、勿論、県内屈指の有名な祭りの一つである。

さて、いやに長たらしい前書きになってしまった。
酔狂にもここまでお読みくださった方も、既にあくびをかみ殺し尽くしてしまった頃であろうから、この辺で実地に入ることにする。


石門

まずは石門のお出迎え。神社たるもの、鳥居がまず迎えねばならぬべきだ、と暗黙のうちに思っていたが、こうして見ると石門も悪くない。赤い鳥居が奥にこそっと控えている。なんとも謙虚そうである。




モデルの如く

先程、謙虚そうな鳥居だと思ったが、意外や意外、どっしりと構えている。如何にも自信ありげである。私がそう感じたのは柱が末広がりであるからに相違ない。この柱の傾きのことを「ころび」と云う。まぁ転ばぬ先の末広がり、と云う奴である。




総コンクリ

見るからに拝殿。ごく一般的な、普通の拝殿である。特筆すべきはなさそうであるが、敢えて云うならコンクリート造りであることか。確かに、如何にもな拝殿という感じはしない。部分的に見るならば、一般民家に見えなくも無い。




デコラティブ

拝殿の裏にくるりとまわり、本殿を眺める。屋根は銅板葺きの入母屋造りである。柱以外の至るところ、彫刻が施されていて見応えがある。建立は明和五年(1768)、江戸から来た彫物師に彫られたそうである。


このようなデコラティブな建築は江戸時代後期以降に広まったそうだが、ここの本殿は流行に敏感な御洒落さんだったと見える。ふん、やるじゃないか。
それはさておき、由緒正しき神社であるから、摂末社も比較的多いに相違ない。
境内をふらりと歩き回る。
さあさあ、面白いものはないか。


風神社と大室神社
風を司る級長津彦命(しなつひこのみこと)と級長津姫命(しなつひめのみこと)を祀る。 伊邪那岐命と伊邪那美命を祀る。

風の神は暴風を鎮める、すなわち航海安全の神でもある。
また、一説によれば風邪予防のご利益もあるのだという。
カゼ、なるほど。

天神社と道祖神
学問の神様、菅原道真を祀る。余りに赤いから稲荷社かとも思ったが見事に外れ。 苔蒸し具合が素晴らしい。まるで抹茶をふりかけたようだ。いや、余りにも綺麗なものだから。


かつては末社として蚕影神社、ほうそう神社もあったようだが、見あたらず。

生出神社には御神体の石をはじめとした伝承や伝説は豊富であるが、史実として裏付け出来るような資料は乏しい、とのことである。
まぁ空想や妄想、夢想の余地のある話も悪くないじゃないか。
学者にしてみれば残念でならないかも知れないけれども。

全ては藪の中。




八朔祭りにて

昼間の大名行列が一番の見どころであるが、例のぼんやりで行き忘れる。何たる阿呆であることか! 夜は屋台と盆踊り。平日の夜であるにもかかわらず、大賑わい。これには閉口した。嫌なら行かねばいいものを、まったく筋の通らない奴だ。

昼間の大名行列のほどはこちらで。

都留市役所 平成20年八朔祭り
http://www.city.tsuru.yamanashi.jp/forms/info/info.aspx?info_id=7417




一部の人々の間でカルト的な人気を誇る「じゃがバター」。
上にかかっているのはバターと甘い田楽味噌である。
この写真を見た友人曰く

「その上のはプリンか?」

いやいや真逆も真逆、何とも想像力豊かな人である。



参考文献

川口謙二・池田孝・池田正弘『鳥居 百説百話』東京美術
倉野憲司校注『古事記』岩波文庫
都留市教育委員会編『都留市社記』
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